2013年12月その3

20131222

続・今年の高専ロボコンについて

昨日の記事を自分で読み返して気付いた。これ感想じゃなくて解説だ。

そういうわけで感想の続き、改め、解説の続きを書いていこうと思う。

アイデア勝負のロボット達(その2)

見た瞬間「これで課題がクリア出来るのか?」と疑いたくなるのが富山高専射水キャンパスの「SuLuMe」だ。大きな風船が目を引く中で肝心のロボット本体を見れば、なんだこれはというほど簡素。秘密はその足にある。軽量、頑丈、そして弾力性のある素材を用いた8本の足で、他のチームにはないふわりとした不思議なジャンプを行う。更に全国大会ではジャンプ補助用に4つのファンが追加されていて、縄跳びの確実性を高めてきた。試合では残念ながら全ての課題をクリアすることが出来なかったようだけれど、動きをみる限りけして不可能ではないように思える。オペレーションにミスがなければゴールすることが出来たのではないか。

SuLuMeのふわりとしたジャンプとは対照的な非常に激しいジャンプを行うのが鈴鹿高専の「メルシー」である。かわいらしいデザインとは不釣り合いなその動きはまさに荒ぶる狂犬。バネの共振によるジャンプとのことだが、物理学に明るくない人間からするとジャンプ出来ているのが不思議すぎる。そして狂犬ぶりとは裏腹に、メルシーはとても賢い。なんと人を自動で追尾する機能を備えている。縄跳びそのものもロボット同士でコミュニケーションを取っているのだから、まさにハイテクロボットと言えるだろう。

ロボコンOBの活躍

珍しく、高専ロボコンを経験した学生達が卒業後にどのような活躍を見せているかの紹介があった。ロボコンの経験が実際にどのように活かされているかを具体的に示すのは、今現在ロボコンに勤しむ学生達にとっても、そして放送を見てロボコンを目指そうと考えている中学生以下の子供達にとっても、分かりやすい道標となる。流石に放送された例は高次元すぎるとは思うが、目標は高い方がよい。彼らが未来の日本の工業を支える存在となることを信じている。

速く、確実に

徳山高専の「色とりドリィ」は、ジャンプの指令を受け取る仕組みがユニークだ。側面に振動感知センサが取りつけられていて、人が飴を模した小道具をぶつけるとジャンプを行う。人が回される縄を見て飴を投げればよいわけで、つまり縄跳びのタイミングを人同士で決められるということだ。人がロボットにタイミングを合わせようと思うと、ロボット側がジャンプするタイミングをよほど分かりやすく知らせる装置がない限り、どうしてもズレが生じる。人同士のタイミング合わせであれば、不確定要素が排除されて確実性が上がる。

更に色とりドリィは、多くのロボットが大きな衝撃を伴った着地をする中で、なんとも柔らかな着地を決めている。もしも着地が乱れると、連続ジャンプをする場合にどうしても確実性が落ちる。場合によってはロボットが転倒してしまうかもしれない。着地を安定させることで、連続ジャンプを決めやすくなる。

色とりドリィは、速さを持ちながらも安定した動作を行う、勝率の高いロボットなのだ。

それぞれの頂

決勝戦は奈良高専の「じゃんぺん」と徳山高専の「色とりドリィ」のカードとなった。じゃんぺんはまさに優勝候補の最右翼。初戦では全ての課題を20秒でクリアし、ジャンプ無制限となった準決勝では色とりドリィを上回る155回の連続ジャンプを記録している。更に色とりドリィは決勝直前にトラブルを抱えてしまい、メンバー、ロボット共に万全な状態ではなかった。誰もが奈良高専の優勝を予想していた。

しかし、高専ロボコンではある言葉が年々語り継がれてきた。曰く、「国技館には魔物が棲んでいる」と。今年の魔物は、あろうことか優勝を掴みかけた奈良高専に襲いかかった。仔細はあえて省くが(いずれ配信されるであろう試合動画で確認してほしい)、結果として安定したジャンプを実現した徳山高専の「色とりドリィ」が優勝し、全国の頂点に立った。トラブルを乗り越えての見事な勝利だった。

そしてもう一つの頂点、勝ち負けを超えて最も優れたロボットに贈られる賞であるロボコン大賞は、富山高専射水キャンパスの「SuLuMe」が射止めた。個人的に、なんとも玄人的な選出だと思った。SuLuMeよりも目を引くロボットは、例えばライオン君やウッキー、それにメルシーなどがあるだろう。しかし、SuLuMeはユニークなジャンプを実現している点において、他のどのロボットよりも勝っている。まさに唯一無二、全国の中で最も独創的なアイデアを持つロボットなのだ。

また来年お会いしましょう

以上が高専ロボコン2013の感想……じゃなかった、解説である。いかがだっただろうか。

高専ロボコンを愛する者として、少しでも皆さんに魅力を伝えることが出来たならば幸いである。

――余談だが、全試合動画と併せて、国技館で各高専の試合前に映されるチーム紹介動画も配信されているので、ご覧頂きたい。こちらも高専生の手作りだ。ロボットの魅力を伝えるチーム、凝った映像を作るチーム、ネタに走るチームと様々なので、楽しめること請け合いだ。

!web拍手!  ↑ページ上部に戻る↑

20131221

放送されますた

昨日の記事で宣伝した通り、高専ロボコンの全国大会の放送があった。勿論皆さんもご覧になられたことだろう。(決めつけ)

宣伝した者の責任として(?)感想を書いていこうと思う。

舞台裏からスタート

高専ロボコンの放映は実は毎年編集が異なる。とにかく試合を多く組み入れたり、芸能人をゲストに呼んでのスタジオ収録があったり。今年はまず初っ端が、実際に高専生がロボットを作っている現場、つまり舞台裏の風景だった。これまでも現場に近い部分を取材した映像が組み込まれることがあったが、今年は色んなチームを巡っているようだった。

こういう部分が放映されるのは非常によい。高専生達がどのようにしてロボットを作っているのか、どんな苦労が隠れているのか、そしてどれほどの情熱が注がれているのか。

学生の生の声ほど、ダイレクトに届くものはないだろう。

故郷のチームが大活躍!

最初に登場したのが、私の故郷にある大分高専の「跳べ! ライオン君!!」と、木更津高専の「カブ跳ムシ」。

視聴された方は「これがロボットなの?」と驚かれたのではないだろうか? 両チームとも、ロボットという語感に含まれる無機質さを徹底的に排除したデザインになっている。見ていて楽しいロボット同士の対決だ。ここで声を大にして言いたいのは、単に飾り付けられただけのロボットではないというところ。モチーフとなった生物の「足」を忠実に再現しているのだ。

ライオン君はテオ・ヤンセンの「ビーチアニマル」に強く影響を受けた動物のような足で、なんとも軽快な動作を実現している。残念ながらあまり注目されなかったものの、カブ跳ムシも虫のような6足歩行足を行う。

足以外を見れば、ライオン君の尻尾も秀逸。見た目にも愛らしいのは勿論、ジャンプのタイミングを縄回し担当に知らせ、ロボットの方向転換にも用いるという、シンプルでありながら一粒で二度も三度もおいしい機構になっているのだ。

ロボコンの魅力を伝える、とてもよい試合だった。

アイデア勝負のロボット達(その1)

次に登場したのが小山高専の「小山サーカスの特訓」。このロボットの特徴はなんといっても「縄の自動検知」だろう。なんとロボット自ら跳ぶタイミングを計るのだ。これはヒューマンエラーを排除することに大きく貢献する。残念ながら対戦相手の和歌山高専「ウメンジャー」が勝利を目指した高速型ロボットであり、試合には敗れてしまった。しかし昨年のロボコン大賞受賞チームらしい、高性能なロボットだった。

都城高専の「跳べ! 最優ウッキー!」は、歩行用の足とジャンプ用の足が同一であり、更に2足歩行でそれらを行う。通常、ひとつの機構でなんでもこなそうと思うと自ずと作りが複雑になってくる。しかもジャンプするということは耐久性が求められることになる。技術的課題を幾つクリアしなければならないのか想像するのも難しい。これを実現した都城高専のアイデアと技術力には目を見張るものがある。

優勝本命最速ロボット

上記で和歌山高専は高速型ロボットであると述べた。小山高専との対戦では42秒で全ての課題をクリアしている。しかし奈良高専の「じゃんぺん」は、なんとその1/2以下の20秒で全ての課題をクリアしてしまうのだから驚きだ。実際に番組を見た方も、開いた口が塞がらなかったのではないだろうか。

これまでに登場したどのロボットよりも機敏な動きはシンプルかつ堅牢な機構により実現している。速い動きは負荷も大きく、必然的にシンプルで丈夫なロボットが求められる。じゃんぺんにはスプリングもゴムもエアシリンダも搭載されていない。シンプルで頑丈であるだけならば作るのは簡単で、何処が問題なのかというと、ずばり完成度だ。何処まで洗練出来ているのか、ここがそのままロボットの強みとなる。

更にじゃんぺんはセンサ類が充実しており、オペレーションがとてもしやすいというところも特徴だ。全国大会という大きなプレッシャーが掛かる場で、人間の負担を軽減することはとても有効に働く。

誰をも寄せ付けぬ速さは、まさに優勝候補の最右翼といったところか。

続きはWebで!

なんだか随分と長くなってきたので、今日はここまで。残りは明日書いて公開することにする。

因みに、番組を見逃したという方も安心してほしい。NHKは太っ腹だった。試合のみであればNHKロボコン番組サイトの配信で視聴することが出来るのだ。現在視聴可能なのは1~2回戦のみだが、全試合配信を謳っているので、いずれ準々決勝以降も配信されるのだろう。

番組を見た方もそうでない方も、試合動画で高専生達の努力の結晶をご確認頂きたい。

!web拍手!  ↑ページ上部に戻る↑

20131220

露骨に宣伝する

突然だが、皆さん高専ロボコンをご存じだろうか。というかまず高専をご存じだろうか。高専がない県もあるくらいなので知らない人も一定数いるだろう。それこそ神奈川には高専がないし……と今の今まで思っていたらサレジオ高専が神奈川の高専だった。てっきり東京かと。

高専は「高等専門学校」の略で、5年間の一貫教育が特徴。乱暴ではあるが高校と短大をくっつけて技術的な専門性を高めたものと言ってしまうのが分かりやすいかもしれない。この辺りは上記リンクからWikipediaを参照されたし。

高専ロボコンは、高専に在籍する学生達がロボットを作り競うものだ。理系の甲子園と称する人もいる。NHKが競技課題を発表し、高専生達が柔軟なアイデア高い技術力を駆使して優れたロボットを作り出すことになる。地区大会でちっとも動けないロボットがいることもよくあるけどね。

毎年10月頃に地区大会、11月頃に全国大会が開催され、それらの模様はNHKで放映されることになっている。今年の全国大会が明日21日の午後4時にNHK総合で放映されるので、是非とも皆さんに見て頂きたい。

高専ロボコンの魅力

高専ロボコンのポイントは、同じ競技課題をこなすにもかかわらず、チームによって高効率なロボットエンターテイメント性の高いロボット、そしてユニークなアイデアのロボットに分かれることだ。勿論、2つ以上を兼ね備えたロボットが出てくることもあるが、大抵は一目見てどれを重視しているのかが分かる。

高効率なロボットは大抵の場合において動きが速く、信頼性が高い。競技課題をとにかく素早く、失敗せずにこなすことが主眼に置かれているのだ。こういうロボットを作るチームは全国優勝を目指している。ひたすら勝ちに来ている。決勝戦は瞬きも許されぬ試合展開が繰り広げられる。

エンターテイメント性の高いロボットは見ていて楽しい。ロボットから無生物さ、無機質さを徹底的に排除し、まさに素直な意味で「面白い」ロボットに仕上がっている。競技課題をしっかりこなしつつ、「その機能いらねーだろwww」という遊び心も満載で、飽きない。

ユニークなアイデアのロボットというのは、必ずしも勝てるロボットとは限らないのが面白い。妙に時間を掛けて動いたり、やたらオペレーションが難しかったりすることもある。しかし誰もがその発想はなかったわと言ってしまうようなロボットに仕上がっており、他のロボットにはない機構や仕掛けを備えている。そのような独創的なアイデアと優れた技術力を実現したロボットには、全国優勝よりも上位に位置するロボコン大賞が授与されることになっている。

その他、アイデア賞技術賞デザイン賞も設定されている。勿論、優れたアイデアや技術やデザイン性を持つロボットに与えられる賞だ。

みんな高専ロボコン見ようぜ!

つらつらと高専ロボコンの魅力を語ってみたが、百聞は一見に如かず、どうか一度視聴して頂きたい。自分は理系ではない、ましてロボットに興味はない、という人でも楽しめることを強調しておく。

明日21日の午後4時、NHK総合なのでお忘れなく!

!web拍手!  ↑ページ上部に戻る↑